ジャータカとは、お釈迦様が自分の過去世の出来事を語った教えです。
それは紀元前の原始仏典から登場し、その後も派を問わずさまざまな仏典に掲載されていきました。
それら諸々のインドに伝わるジャータカの中から、グプタ王朝の時代(四〜六世紀)のアーリヤシューラという人が、内容的に優れていると思われる三十四作品を選び出し、美しい文体でまとめ直したのが、「ジャータカ・マーラー」という作品です。
この作品がどれほど人々に愛されていたのかを示す逸話があります。あるとき、文学作品をきわめて好んだハルシャという王が、「日頃から詩を好む者があるならば、明日の朝、自分が好む詩を持ってきて、わたしに示しなさい」と国民に告げたところ、国民が持ってきた作品の多くが「ジャータカ・マーラー」だったというのです。
また「ジャータカ・マーラー」の内容は、インドのみならず近隣のアジア諸国にも壁画や彫刻として残っており、いかにこの作品が多くの人々に愛されたかを示しています。
チベット仏教のカダム派でも、最重要視する基本経典の一つとして、入菩提行論やシクシャー・サムッチャヤ、ウダーナヴァルガなどと共に、この「ジャータカ・マーラー」を挙げていました。
本書では、この「ジャータカ・マーラー」の中からさらに特に素晴らしいと思われる十九作品を抜き出し、わたしなりに読みやすくリライトを加えたものをまとめています。
菩薩道の花輪 -ジャータカ・マーラー-
¥1,000価格